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能面師 福山元誠の世界
能面と私
福山 元誠

能面を作ることを、「面(おもて)を打つ」という。
(これは他の彫刻にはない表現である。)

したがって能面作者のことを面打ちと呼びならわしている。
打ち込むという行為によって能の面は完成されるのである。
現代人にとって何かに打ち込めることはあまりにも少なく、時間に追われ気がつくと人生に何も残せなったという風潮がある。
何か打ち込めることを捜していた私は、文学的な興味もあって能と能面に出会った。

能面は木彫に日本画の彩賦をほどこしたものである。
真に日本的な工芸の粋がここに結晶したものと考えられる。
また演劇としての能、仮面としての能面に強く惹かれる。
能の精神の背後には禅の哲学がある。
現代の日本人が忘れてしまった、古しへの心がここにあると思う。
面を打っているとそれを感じる。

面に秘められた呪術的な世界に身をゆだねると時空を越えた世界に自分を置くことができる。

エッセイ | 「能面と私」

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